TeeZeeです。今回は韓国の人気バラエティ番組を通じた、女性アイドルの挑戦記を書いてみます。
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最近LABOUMが「週刊アイドル」に出演した際に、ユジョンが「過去、デビュー前にHidden Singerという番組に出演した」と話していました。

「Hidden Singer」は、韓国で人気の音楽バラエティ番組です。基本的には「歌まね番組」です。
有名な歌手と「歌まね挑戦者」の歌から、本物を当てるというものです。
司会者やパネラーによる盛り上げはありますが、歌の披露に関しては「ウケ狙い」はなく真剣です。
また、歌手や参加者たちのトークなどが視聴者の共感を得て、人気のフォーマットになっています。
日本にいる限り番組の全編を見ることはほぼ不可能ですが、番組放映局のJTBCがYoutube等にハイライト動画を載せているので、断片的ですが楽しむことができます。

歌まね挑戦者には、歌手志望者や人気の伸び悩むプロ歌手などが(老若男女問わず)よく出演します。
番組出演を通じて歌の実力を披露し、何らかのチャンスをつかもうとする姿が見て取れます。
かなり強引ですが、好評を博したあのPRODUCE101に近い発想を感じます。

今回の記事では、この番組にそうした立場で出演した、ガールズグループゆかりの6人を紹介します。
例によって長い記事になり、どこまで伝わるか不安ですが、よかったらお楽しみください。
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■「Hidden Singer」フォーマット概要
・毎回、有名な歌手が招かれる。その歌手のヒット曲が課題曲となる。
・歌手本人と5人の「歌まね挑戦者」(原語は「模唱能力者」)が、番号のついた筒の中に入る。
・第1~第4(最終)ラウンドがあり、各ラウンドでは課題曲の何小節かを順番に筒の中で歌う。
・スタジオの判定者は「最も本人でないと思う人」をボタンで選び、最多得票者1名が脱落する。
・最終ラウンドのみ「本人と思う人」を選び、最多得票者が優勝する。
・歌まね挑戦者の中で最上位者が、最終回の「チャンピオン大会」(原語は「王中王戦」)に出場する。

たいていは本物歌手が優勝しますが、まれに途中で脱落することがあります。
その後の本物歌手は、優勝資格のない立場で参加を続けます(本人がいないと成立しないので)。

歌まね挑戦者は、プロアマ問わず、また有名無名を問わずかなりの実力者が登場します。
ただ上手いだけでなく、本物歌手の大ファンであることが多いです。
挑戦者の自己紹介場面では、自身の苦労話や歌手への熱い思いがしばしば感動を呼びます。
こうした参加者と歌手の真剣で真摯な姿が、バラエティ番組として成功している秘訣のようです。
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■2013年3月30日放送「イ・スヨン編」~LABOUMユジョン~
では、まずはユジョンが出演した「イ・スヨン編」の関係シーンから紹介します。

○イ・スヨン「Grace」問題編

イ・スヨンは2000年代に人気を博した女性ソロ歌手です。
原曲をご存じない方がほとんどと思いますので、みなさんは「誰が本物か」は分からないと思います。
番組のフォーマットを知るためにご覧ください。歌の披露の後、パネラーがいろいろ予想しています。

○イ・スヨン「Grace」解答編

次々と扉が開いて、本物歌手と歌まね挑戦者たちが出てきます。本物のイ・スヨンは2番でした。
驚愕の1番と歌唱力抜群の5番に目を奪われます(この2人も素人から後にプロ歌手になります)。
一方、ユジョンもうまく歌えたと思うのですが、「最も本人でないと思う人(注:下手な人、ではない)」
の票を一番多く受けてしまい、ここで脱落となりました。

○自己紹介シーン(キム・ユジョン)※1:09~

<大意>
・(番組ニックネーム)練習生イ・スヨン、(名前)キム・ユジョンです。
・午前にはカフェでアルバイトして、午後にボーカル学院で練習しています。
・(パネラーより)顔が女優のパク・ボヨン、カン・ソラに似てますね。
・ある番組でイ・スヨンさんが面白いダンスを踊られていて「すごい!」と思った。
・2NE1「Fire」に合わせたマクチュム(フリーダンス)をイ・スヨン先輩と一緒に踊りたいです。
…で、そのダンスです。私たちが知るユジョンよりかなり肉食系です。若気の至りでしょうか。

実は私、この「イ・スヨン編」は特に好きな回で、動画を何度も観ていました。
この練習生のことも印象に残っていて「いつかデビューできるのかな」と思っていました。
一方、のちにLABOUMがデビューした際、ユジョンとこの練習生が全く結びつきませんでした。
今回の週刊アイドルを見て「あの子だったんだ!」と感動した次第で、この記事を書いたきっかけです。

○最近のユジョンー2016年4月7日 エムカウントダウン LABOUM - 「想像プラス

「Hidden Singer」では、ab avenueで活動していたことは触れず、練習生として登場しました。
ab avenueの最終シングルは2012年なので、出演当時は無所属だったことに間違いありません。
ご存知のとおり、現在はLABOUMとして人気上昇中。もう何も心配ありませんね。


■2013年5月4日放送「ペク・チヨン編」~Blady ガビン~
2NBのメンバーだったキム・ソンイ。
改名して現在はBladyに合流したガビンも出演していました。

○ペク・チヨン「忘れないで」問題編

ペク・チヨンは、バラードの女王として多くのヒット曲があります。
初期の頃は「私の耳にキャンディ(with 2PMテギョン)」などのダンス曲もあります。
この曲「忘れないで」も有名なので、ご存知の方は「本物のペク・チヨン」を当ててみてください。

○ペク・チヨン「忘れないで」解答編

パネラーのホ・ガクやB1A4サンドゥルが4番で盛り上がっています(理由はあります)が、3番にいたガビンも、なかなかいいシャウトを利かせています。
ちなみに1番は「踊れるトロット歌手」スケン。「Mnet トロットX」にも出演していました。

○自己紹介シーン(キム・ソンイ=現キム・ガビン)

<大意>
・(番組ニックネーム)復学生ペク・チヨン、(名前)キム・ソンイです。
・2NBという女性デュオで活動したが、契約終了後は休学していた大学に通っています。
・デビュー当時、声と感性が似ていることから「第二の(リトル)ペク・チヨン」と紹介された。
・この場所で先輩から直接「第二のペク・チヨンはキム・ソンイだ」と言ってほしいです。
…これに対してペク・チヨンも、「成功するよう祈るしかないが、頑張る後輩のことをずっと覚えて待っていますね」という言葉をかけていました。そして、その言葉は2年後に現実となります。
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画像出典:http://daily.hankooki.com/lpage/entv/201503/dh20150331165529139020.htm

○最近のガビンー2015年8月10日 山本駅ミニライブファンカム Blady - 「Secret Number

(途中で音響がなくなるハプニングの中、実力とプロ意識がわかる映像です。)
Bladyとして2曲活動しましたが、なかなかコンセプトが固まらないようです。
ガビンに関していえば、彼女はガールズグループよりソロやデュオの方が向いているかもしれません。
何とか元相方のEXIDソルジに追いつけるような、起死回生のヒットを期待したいですね。


■2013年11月23日放送「IU編」 ~シャノン、元2EYES キム・ヨンジュン~
今回紹介する中で、最も「Hidden Singer」出身として知られているのがシャノンです。
また、当時2EYESに所属していたヨンジュンも出演していました。
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○IU「いい日」問題編

IUは、説明の必要がない女性ソロシンガーですね。
最近はミューバン・エムカなどの音楽番組になかなか出ないので、復活を待っています。

○IU「いい日」解答編

2番登場の時のどよめきがすごいですね。この方は英国在住の素人さんです。
4番はコーラス歌手で、IUのアルバム収録曲のガイド歌手を務めたこともある方です。
そして、ハイライトの「三段高音」を務めた1番のシャノンは、このあとさらに実力を披露します。

○自己紹介シーン(シャノン)

導入部が省略されていますが、英国人と韓国人のハーフであること、英国でミュージカルに出演していたことなどを話していました。(番組ニックネームは「ミュージカルIU」です)。
<ここから大意>
・IUは私にとってロールモデル。歌もうまくてかわいくて演技も…私もIUみたいになりたいです。
・(涙の理由は)お会いした時から、好きなので感動してしまって…。
<IUのコメント大意>
・(シャノンこそ)かわいくて歌が上手いから、私よりもっといい歌手を好きになればいいのに。
(パネラーから「愛するから別れよう、ってことか!」と突っ込まれています。)
・まずはありがとう。そしてロールモデルと言われて恥ずかしくないよう、私も頑張ります。

そして、英国で出演したミュージカル「レ・ミゼラブル」の歌を披露し、パネラーを泣かせています。
○Shannon - 「I Dreamed a Dream


シャノンはこの回の歌まね挑戦者の中で1位となり、後日「チャンピオン大会」にも出演しました。
この番組のアイドル的な役割で世間に名を知らせた後、2014年に念願のソロデビューを果たします。
ただ、デビュー活動時期にセウォル号事故が発生し、多くの関心を得られなかったのは不運でした。
(正確には、一度Five-Dollsに在籍していたはずですが、なかったことになっているようです)

○最近のシャノンー2015年4月18日 エバーランド桜祭りファンカム Shannon - 「なぜ、なぜ

個人的に、歌唱力とビジュアルは「逸材」だと思います。しかも現在まだ18歳(98年生)です。
今は「なぜ、なぜ」のような等身大の歌と、歌唱力を見せつける歌での活動を織り交ぜながら、ゆっくり大きく育ってほしいと思います(所属社がT-ARAやDIAと同じ、あのMBKなので心配です)

○自己紹介シーン(キム・ヨンジュン)

動画の前に「(番組ニックネーム)女子高生IU、(名前)キム・ヨンジュンです。」と紹介しています。
<大意>
・子役俳優で活動していました。連続ドラマの主人公の幼少期や、娘役で出ていました。
・実は、(ガールズグループ)2EYESのマンネ、ヨンジュンです。
・(IUより)見た瞬間「歌手だ」と思った。音楽番組の司会をしていたので見たことがあると思った。
(注:IUは人気歌謡のMCを2013年7月まで務めていました。2EYESのデビューは同年6月。)
今日いる参加者の中で、一番注目していたし、気も遣っていた。
・小学生の頃、音楽番組でIUの「Boo」を観て「私もあの舞台に立って歌いたい」と思った。

ヨンジュンもシャノンと同点で「チャンピオン大会」に進出しました。2014年1月11日放送です。
しかしこれが、現時点で彼女を動画サイトで観れる最新の映像となってしまっています。
2EYESはせっかくのヨンジュン知名度向上のチャンスを生かせず、2014年は活動がありませんでした。
そして昨年の久々の活動「Pippi」の時には、ヨンジョンはすでに脱退していました。

○過去のキム・ヨンジュンー2011年4月30日 音楽中心 SpinEL - 「Chu Chu

実はヨンジョンは、2EYESの前にSpinEL(スピネル)という女性デュオで、2011年にデビューしています。当時は中学生でした。
しかしSpinELの活動は約1年で終了し、その後オーディション番組にも出演しています。
86年生で今年20歳ですが芸歴が長く、いろいろなチャンスを得ているのに活かせていない印象です。
現在はソロデビューに向けて準備中とのことですが、早く目に見える結果がほしいところですね。


■2014年9月20日放送「少女時代テヨン編」~N*White スヒョン、カン・シラ~
最後はPRODUCE101で活躍したカン・シラとN*White スヒョンが出演した、約1年半前の回です。

○少女時代テティソ「Twinkle」問題~解答編

この第3ラウンドは、歌の披露のあとすぐに正解発表なので、当てたい人は途中で止めてくださいね。

何と言っても3番に目が行きます。この方は少女時代ファンには有名な方らしく、結局優勝しました。
そして1番がカン・シラ、2番がスヒョンです。

○自己紹介シーン(イム・スヒョン)

<大意>
・(番組ニックネーム)タンスの中のテヨン、(名前)イム・スヒョンです。
・全羅道光州出身で、中学の時にソウルの学校に進学したが、適応できず友人もいなかった。
・その時にテヨンの「もしも」をよく聴いて歌ううちに、自分も歌手になりたいと思った。
・歌手の夢を両親から反対されたので、部屋の洋タンスの中に入って歌の練習をしていた。
・(テヨンより)自分に自信があれば、いい結果を出してご両親も信じてくれる。頑張ってね。

直接言及されていませんが、番組終了時の字幕で「N*Whiteのメンバー」と表記されていました。
N*Whiteの活動時期は、2013年8月、2014年9月、そして2015年8月の3回です。
ヨンジュンの2EYES同様、スヒョンの出演はグループの知名度向上に活かせなかったようです。

○最近のスヒョンー2015年7月30日 エムカウントダウン N*White - 「天国

私が現地で観覧したステージです(ちなみにこの日はBladyも出演していました)。
観覧レポートにも書いたように、素敵な曲でしたし、現地でもいい反応を返してくれました。
何とかチャンスをつかんでほしいです。

○テヨン「聞こえますか」問題~解答編

一方、カン・シラのインタビュー動画は、残念ながらYoutubeはじめ動画サイトにありません。
代わりに、最終ラウンドの動画を掲載します。せっかくなので何番がテヨンかを当ててみてください。
パネラー席にいるRed Velvetウェンディのリアクションが、何とも言えません…。

ニュース記事によると、番組では以下のように自己紹介したようです。
・(ニックネーム)桜花少女テヨン、(名前)カン・シラです。
・テヨンのような歌手になることが夢で、SMのオーディションを何度も受けたが落ちた。
・Busker Busker(「桜エンディング」という曲が大ヒットした男性バンドグループ)の事務所に、オーディションでテヨンの「聞こえますか」を歌って合格し、MVにも出演した。

優勝はできませんでしたが、テヨン出演による高視聴率と相まって、話題を得ることは成功しました。
今回紹介の中では唯一の「デビュー未経験者」ですが、夢の実現には確実に近づきました。そして…。

○最近のカン・シラー2016年3月25日 PRODUCE101第10回放送「同じ場所で

何と言っても、この番組が生んだ最大の名曲「同じ場所で」に参加できたのは大きいと思います。
I.O.Iとしてのデビューは叶いませんでしたが、知名度は大きく向上し、今後に期待を持たせました。
癒し系アーティストの多い事務所(青春ミュージック)なので、きっと素敵な曲で現れることでしょう。


■まとめ
K-POP界には、デビュー当初あるいはデビュー前から人気を博す人たちも多い一方で、
こうした地道な活動をこなす人たちもたくさんいることを、感じていただければと思います。

あと、日本で観られない韓国のバラエティ番組について紹介しましたが、うまく伝わったでしょうか。
「Hidden Singer」に限らず、韓国には「音楽をまじめに扱う」バラエティ番組が多いと感じます。
また「古くてもいい曲」に対するリスペクトも感じます。なので「全世代が知る曲」が多いのです。
K-POP、いや韓国エンタのそういう点も、何かの機会で感じていただければ幸いです。
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